適格消費者団体認定記念シンポジウム
2024.6.8
2024.6.8
□共催:奈良県 奈良弁護士会 奈良県生活協同組合連合会 □後援:奈良市 奈良県消費生活相談員連絡会
2024年6月8日、第9回通常総会に合わせ、適格消費者団体認定記念シンポジウムを開催しました。
全国で一番早く認定を受けられた適格消費者団体消費者支援機構関西(KC's)の差止請求検討委員会委員長の松尾善紀弁護士を講師に招き、基調講演とパネルディスカッションを行いました。これから始まる「差止活動の実際」について詳しく知る機会とあって参加者の関心も高く、会場70席がほぼ満席となりました。
講師の松尾善紀先生
司会の大塚浩理事
本シンポジウムは当団体の適格消費者団体認定を受け、差止請求等の活動が本格化するにあたり、制度や団体の活動を広く知っていただき、奈良県の中で消費者のくらしに引きつけ活動をどのように進めていくかを参加者みんなで考えることを目的に企画しました。
基調講演は「日本で消費者の権利の議論や法整備ができたのはつい最近のこと、だからこれからもみんなで作り上げていくべきもの」という前置きから始まりました。お話の内容を一部抜粋してご紹介します。
◆活動の原点:適格消費者団体であると同時にNPO法人として不特定多数の人の利益に寄与する、市民の自主的で自由な社会貢献活動です。消費者基本法第8条の「消費者団体の責務」にもあるように、活動の中心は消費者の意見表明、教育啓発、被害の防止と救済のための取り組みであり、欺瞞的、不公正なビジネス慣行や不公正な競争から人々を保護することです。
◆差止請求の類型とポイント:一つ目は消費者契約法や特定商取引法で規制されている「だます」「ビビらせる」など不当な勧誘行為をやめさせることです。2つ目は、利用規約などの不当条項の使用を差し止めることで、これが最も取り扱いが多いパターンです。データなどで証拠がつかめるため立証で争わなくてもいいからです。最後に不当表示の是正です。これは事業者がすぐに削除をするのでなかなか裁判までは持っていきにくいのですが、事案は多いですし、取り組みの効果は大きいです。
◆取り扱う事案の選定:広く社会の共感や注目を得られる、身近な消費生活に影響を与える可能性がある、被害が深刻である、などを目安に取り組むのがいいでしょう。
◆みんなで協力し合い、自主的に、無理なく、そして奈良の唯一の適格消費者団体としてその独自性・個性を発揮してください。被害の予防・救済は適格消費者団体だけで達成できるわけではなく、またこのようにボランティアで支えられいます。より良き社会実現のためのひとつの活動として、気負わず、粘り強く、後継者も育成しながら活動を続けていってください。
後半のパネルディスカッションは「教えて!松尾先生」と題し、当団体で活動している3名がそれぞれ講師に疑問に思うことを質問して答えてもらうというコーナーです。
質問者は、消費者の立場から寺田道子理事、弁護士の竹内大敬検討委員長、相談員の堀内啓子理事で、コーディネーターは相談員の沢井馨子理事が務めました。以下、主な質問と松尾先生のお答えをご紹介します。
◆個別のトラブル相談とは違うと思うのですが、消費者からのどんな情報提供が検討活動に役立つのでしょうか?
→個別事案の中にも多数の苦情が発生してるケースもあるので、国民生活センターのPIO-NET申請や他の消費者団体との情報交換もしながら、活動につながるものを絞り込んでいます。
◆具体的な裁判の手順や費用について教えてください。
→実際に提訴段階に入ったら、担当弁護士など3~5名で弁護団を結成しそこが中心になって進めることになります。弁護士費用や裁判の実費もかかりますから、上限金額を想定した予算立てが必要です。財政基盤をしっかり作らないといけません。
◆持続可能な活動にするため、どんな工夫をされましたか?人材確保も大変そうです。
→一度お試しで参加してもらうなど、呼びかけの工夫が大事です。財政は、団体賛助会員の加入や寄付を呼び掛けたりして地道に増やしていきます。
◆(会場から)1件目の差止訴訟はどんな事案がいいでしょうか。
→その時の状況もあるのですが、勝算のあるものがいいと思います。とはいえ、裁判すること自体が社会的インパクトを与えるので、勝訴だけにこだわらなくていいと思います。敗訴しても必ず控訴しますし,和解に持っていくこともできます。
このほかにもたくさんの質問があり、松尾先生から一つ一つ丁寧に回答していただきました。充実した実りの多い情報交流の時間となり、予定時間を少し過ぎ終了しました。
最後に、シンポジウムのまとめに合わせ、総会からの一日をふりかえり北條理事長が閉会の挨拶を行いました。
「感動的なお話でした。KC'sはじめ全国の先輩団体が多くの困難を乗り超え道を切り開いてこられたことがわかりました。認定前のなら消費者ねっとが扱った事業者の大半が改善に応じてくれたのは、そのおかげです。公正な市場の実現、安心して取引ができ、消費できる世の中になるために、みんなの協力が必要ということを実感しました。これからも皆様の期待に応え、力を尽くしますので、応援をよろしくお願い申し上げます。」
※第9回通常総会の詳細はこちら