賃貸住宅の申込金キャンセル時返還トラブル
(検討期間2023年12月~2024年12月)
(検討期間2023年12月~2024年12月)
【関 連 情 報】 マンションやアパートの部屋を借りようとして探している方へ
マンションやアパートの部屋を借りようとしているとき、申込金等の名目で不動産業者にお金を渡しても、賃貸借契約成立前であれば、たとえ申込み側の自己都合で申込を撤回した場合であっても、渡したお金の返還を求めることができますし、不動産業者も返還に応じなければなりません(宅建業法47条の2第3項)。
契約成立前に申込金等を求める不動産業者は減ってきていますが、依然として、契約成立前に申込金等を求める不動産業者はいますし、契約書に署名捺印する前であっても、独自の契約条項を根拠にして返還しない不動産業者に巡り合うこともあり、申込金の返還をめぐってトラブルになることがあります。
どの部屋(家)を借りるのか確定していない段階で、不動産業者にお金を渡すことには慎重になりましょう。また、契約成立前に申込金等を求める不動産業者については仲介を拒否し、契約成立前に申込金等を求めない不動産業者に依頼することを検討するのもトラブルを回避する方法の1つです。
【事案の概要】
アパートの契約締結前に、預り金と称するお金を不動産仲介業者に支払った。
しかし、気になるところがあったため翌日に取り止めにしたいので預り金を返してもらいたいと伝えたところ、「賃貸人が承諾した時点で既に契約は成立しており一方的な解除ができない」、「預り金は手付金となったっため一方的な解除は手付解除となり、申込者は手付金を放棄することになるため、返還はできない」と言われた。
賃貸借契約書を締結する前であり、まだ契約は成立していないと思っていたし、預り金が手付金になったことも認識していなかったため、返還してもらいたいと改めて伝えたが、手付解除のため返還できないとの回答であった。 事業者:株式会社山晃住宅(本店所在地 奈良県北葛城郡)
1 賃貸借契約書作成前に、個別の事情を問わず賃貸人の回答をもって一律に契約が成立するとの特約は、賃借人となろうと
する者が賃貸借契約成立の意思を有していない段階で、その意に反して契約を成立させる内容を含むものであり、消費者契
約法10条により無効ではないか。
2 契約交渉の初期段階であっても、定型の重要事項説明書によって、消費者から預り金の交付を受けた後は、賃貸人の回答
をもって一律に契約が成立するとの特約条項をもって、消費者からの返還請求を拒否するという運用は、宅地建物取引業法
47条の2第3項及び同法施行規則16条の12第2号において、宅地建物取引業者が、契約申込の撤回に際し、預り金の
返還を拒む行為を禁止した趣旨を没却するものではないか。
1 問合せの実施及び回答
2024年3月27日付で、上記各問題点を検討するため、事業者に対し「お問合せ」※ををを送付しました。
2024年4月4日 事業者より回答がありました。
2 「申入書兼ご要望」の送付
2024年6月28日付で、上記各問題点について、事業者に対し「申入書兼ご要望」※を送付しました。
3 回答の受領
2024年7月8日付で、申入書に対し、事業者から以下のような回答がありました。
・重要事項説明書を説明した後に、手付金相当額を預り金として受領し、入居審査にて賃貸人承諾があった時点で賃
貸借契約は成立するため、手付金相当額が手付金に振り替わる。手付金になった後に、賃借人から解約するとき
は、手付金の返金ができない。
・売買契約と違い、賃貸借契約は諾成契約で合意して、その後持ち回りで賃貸借契約書に署名するという慣習になって
いるので、賃借人からの解除は、手付解約となる。
・契約書作成前であっても、賃貸借契約が成立しているため、賃借人は部屋が確保でき安心して決済や引っ越しの準備
ができるし、賃貸人は新たな入居者募集をすることもなく、安心して入居してもらう準備ができる。
・当局様に説明したところ、宅地建物取引業に何ら定職することもなく、現在の運用で結構ですとお墨付きをもらっ
ている。
・預り金や手付金、契約成立時期等の項目については、常に強調して賃借人にかなり細かく説明しているので、行き違
いはなく賃借人は全て理解していると考えている。賃借人は理解しているにもかかわらず、事業者に手付金の返還を
求める相談をしているものと推測している。
・現在の運用を変更することはしないが、今まで以上に丁寧に賃借人に説明をしていく所存である。
4 「申入書(2)」の送付
2024年10月 この回答を受け、対応を協議しました。
○消費生活センターで受け付けられた 「山晃住宅」を事業者とする相談事例として、預り金や申込金の返還に関する
類似事案の件数が2023年度だけで9件あることや○事業者が使用している預り金や契約成立時期の特約条項自体
が複雑であること○奈良県における不動産賃貸業のリーディングカンパニーであると自認されていること等を踏まえ、
2024年10月25日付で「申入書(2)」※を送付しました。
5 活動の終了
2024年12月 事業者から再回答はなく、活動を終了することになりました。双方で見解の相違があり、具体的な改善
は見られなかったため、当法人は、改めて消費者からの情報提供等があれば再度是正の申入れ・改善の要望等を実施する所
存です。