バス事業者に誤認しやすい広告表示を改善させた事例
(検討期間2023年3月~2024年3月)
(検討期間2023年3月~2024年3月)
【事案の概要】 バス事業者が高齢者向けに販売しているバスカード(通常の大人運賃が半額になる優待カード)について、カード購入料金を考慮すれば半額では乗車できないにもかかわらず、「半額でご乗車出来ます!」と強調して表示している広告の内容は、消費者が誤認し不利益を被るおそれがあるため、わかりやすい表示とするよう改善を申し入れました。
「半額で乗車出来ます!」等の広告表示が景品表示法5条2号の有利誤認表示に該当して違法か。また、同号に該当しないとしても、カード購入料金を考慮すれば半額では乗車できないにもかかわらず、あたかも半額で乗車できるかのように誤認させる表示であり、消費者が不利益を被るおそれがあるので、改善されるべきではないか。
消費者から、バス事業者が65歳以上の高齢者向けに販売しているバスカード(通常の大人運賃が半額になる優待カード)について、カード購入料金を考慮すれば半額では乗車できないにもかかわらず、「半額でご乗車出来ます!」(以下「当該強調表示」といいます。)と強調して表示している広告の内容は、消費者が誤解し不利益を被るおそれがあるのではないかとの情報提供がありました。
広告の内容を検討したところ、広告全体を詳細に見れば、あくまでも通常の大人運賃が半額となるにすぎず、カード購入料金を考慮すれば半額では乗車できないことがわかるような説明も記載されているため(ただし、当該強調表示から離れた場所に記載されている)、景品表示法5条2号の有利誤認表示に該当するとまではいえないのではないかとも考えられましたが、消費者が当該強調表示だけを見て誤認するおそれもあることから、消費者にとってわかりやすい表示内容とするよう改善を求めることとしました。
2023年5月17日
事業者に対して、以下の趣旨の要望書を発送しました。(「ご要望」)
1 『半額でご乗車出来ます!』と強調されている表示については、通常運賃の半額の運賃で乗車できることが明確に
わかるような表現に変更してほしい。
また、その表示のすぐ近くに半額運賃の適用やカード購入料金を考慮してもトータルで得をするには様々な条件が
あることを記載してほしい。
例えば、以下のように記載することを提案させて頂きます。
『通常運賃の半額の運賃でご乗車できます!ただし、〇〇パスのご利用や〇〇パス購入費用を含めて総額として
お得になるには様々な条件がありますので、チラシをよくお読み下さい』
2 消費者が3ヶ月券または6ヶ月券を購入して乗車する場合、全ての利用区間について有効期限内に何回乗車すれば
得をするのか(損益分岐点)、また、乗車回数に応じてどの程度得(損)をするのかについて、容易に認識することが
できるような一覧表を掲載してほしい。
2023年6月7日
事業者より以下の趣旨の回答がありました。
1 表紙の記載について
「半額でご乗車出来ます!」という記載についてはご意見を踏まえ、今後、お客様にゴールドパスの制度をより
ご理解いただきやすい内容に記載を変更する。
2 中面の記載について
損益分岐点等を容易に認識することができるような一覧表を掲載することについては、当社の路線は非常に多くの
区間運賃が存在し、紙幅の関係もあり、掲載することは困難であるが、今後の広告活動の参考とする。
2023年7月19日
事業者からの回答に対して、以下のとおりお願いをしました。 (「回答に対するご連絡」)
1 広告内容を変更した場合には当法人に送付してもらいたい。
2 損益分岐点等の表示については、利用区間ごとの完全な一覧表を作成することは困難であるとしても、ホームページ
上で表示したり、利用者がホームページ上で損益分岐点等を検索できるシステムを構築することも考えられる。
改善すれば当法人に教えてほしい。
2024年1月24日
その後、事業者から広告内容を変更した旨の連絡と修正後の広告が送付されてきました。主な修正点は以下のとおりです。
1 修正前には『半額でご乗車出来ます!』とかなり大きなフォントで強調されていた表示を『路線バス運賃が半額にな
ります。』と修正されており、半額の対象が路線バス運賃であることが明示され、強調の程度も穏やかになっている。
2 『路線バス運賃が半額になります。』との表示のすぐ下には『ご注意』として『ご利用の区間や頻度によって、割引額が
購入金額を下回ることがあります』『ご購入にあたっては中面をよくご確認ください。』などの注意事項が記載されている。
2024年3月1日
修正された広告の内容は、当法人の要望に沿うものであり、一般消費者が誤認混同するおそれが減少する内容に改善さ
れているため、事業者が当法人の指摘を真摯に受け止めていると評価できるものでした。そのため、申入れ活動を終了す
ることとし、終了通知を発送しました。 (「ご連絡(終了通知)」)
なお、損益分岐点等が容易に認識することができる一覧表の掲載(あるいはホームページでの検索システムの構築)
については、コスト等の問題もあり、システムの導入は容易ではないものの、消費者に必要かつ適切な情報提供を行う
という観点から今後も検討を続けてほしい旨を要望しました。