整体院の回数券トラブルと広告表示
(検討期間2024年5月~2026年3月)
(検討期間2024年5月~2026年3月)
整体院に対して、回数券の購入費の返金を一切認めないキャンセルポリーを改善
させるとともに、病気の改善等をうたった優良誤認広告を削除させた事例
1 【事案の概要】
① 回数券の購入費の返金を一切認めないキャンセルポリシー
奈良・大阪・京都で複数の整体院を運営している事業者が、「キャンセルポリシー」において、回数券(11回分の施術を10回分の代金で受けることができる回数券)を購入した顧客に一切返金を認めない取扱いをしていたため、一定の場合には返金を認めるよう改善を申し入れました。
② ホームページ上の広告
当該整体院のホームページでは、特定の病気の原因が自律神経や骨盤のゆがみにあるなどと記載したり、施術によってうつ病や生理痛や逆流性食道炎などの病気が改善することを謳ったり、医師であることが明確ではない人物の写真やコメントを掲載して「医師も絶賛」と強調したり、「個人の感想」を不当に表示するなどの問題となる表示があったため、そのような表示を削除するよう申し入れました。
事業者:株式会社心整体(本社所在地:奈良県葛城市)
① 整体院が顧客に対する施術(役務)を提供する契約が複数回にわたる継続的な契約である場合には、顧客はいつでも契約を中途解約できるというのが民法上の原則であり、中途解約した場合には前払いした代金のうち未施術分の返金が認められるべきである。この整体院では顧客が10回分の価格で11回分の施術を受けることができる回数券を販売しており、顧客が回数券を購入して継続的に施術を受ける場合には、形式的には「施術を受ける権利の売買」として中途解約ができないと考える余地があるものの、実質的には役務を提供する継続的契約であるとして考えるべきであるから、回数券を購入した顧客に一切返金を認めない取扱いをしていることは消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に違反するのではないか。
② 整体院が広告において医学的根拠が明確でないのに病気の原因が自律神経や骨盤のゆがみにあるなどと表示したり、施術によってうつ病や生理痛や逆流性食道炎などの病気が改善することを謳ったり、医師であることが明確ではない人物の写真やコメントを掲載して「医師も絶賛」と強調したり、「個人の感想」を消費者庁がガイドラインで定める方法によらずに表示しており、これらの表示は景品表示法第5条第1号(不当な表示の禁止・優良誤認表示)に違反するのではないか。
3 取り組みの経緯
◇2024年5月 相談者から情報提供がありました。
◇2024年6月19日~ 検討委員会で、キャンセルポリシーやホームページ上の表示の問題点を検討し、病気の原因や
改善等の表示について根拠を求める問い合わせをすることになりました。
◇2024年10月25日 事業者に対して、「お問合せ」を送付しました。主な内容は以下のとおりです。
1 病気等の原因に関する記載の根拠について :貴院のホームページでは、医学的には原因が不明である等とされている
病気等について、当該病気等の原因を断定する記載が随所に見られます。その全てについてお尋ねすると膨大になる
ため、以下の8つに絞ってお尋ねします。
① 腰痛の原因について『あなたが「腰が痛い」と思う時には、必ず骨盤と腰の骨に可動性がなくなっている状態になっています』と記載していますが、貴院が腰痛の原因を上記のように断定して記載されている医学的根拠をお教えください。
② 座骨神経痛の原因について『原因のほとんどは、お尻の筋肉の固さや腰の骨の可動性がなくなっていることです。また、骨盤の位置が下がってくることでも、座骨の神経が圧迫され、座骨神経痛が発症します。』と記載していますが、貴院が座骨神経痛の原因を上記のように断定して記載されている医学的根拠をお教えください。
③~⑥:省略
⑦ 逆流性食道炎の原因について『逆流性食道炎の本当の根本原因は、自律神経の乱れによるものです。』と記載していますが、貴院が逆流性食道炎の原因を上記のように断定して記載されている医学的根拠をお教えください。
⑧ うつ病の原因について不眠を伴わないうつ病につき、胸椎の9番の可動性が悪い旨、不眠を伴ううつ病については胸椎9番の異常に付け加えて胸椎8番に異常がある旨記載していますが、貴院がうつ病の原因を上記のように断定して記載されている医学的根拠をお教えください。
2 貴院の整体法により病気等が改善する根拠について :貴院のホームページでは、医学では根本的に改善しない上記第
1の病気等を貴院の整体法によって改善することができると記載されていますが、「改善」の具体的内容及び「改善」の
効果があることを裏付ける合理的な根拠を示す資料やデータをお示しください。
3 「脳神経内科専門医 A先生」について (※医師とされる者の氏名については個人が特定されないように「A」として
います) : 貴院のホームページでは『医師の推薦』として『脳神経内科専門医 A先生』が『私の腰痛すべり症、脊柱管狭窄症を改善してくれたのは心整体院でした。』『現代医学の常識では考えられません。』『私は自信をもって心整体院をオススメします。』などと記載して、医師が貴院のことを推奨をしている旨の記載があります。ところが、当法人において厚生労働省の医師等資格確認検索によりA氏を検索しても同氏は出てきませんし、GoogleやYahoo!などの検索サイトを利用して検索しても同氏が医師であることを確認できる記載は一切表れませんでした。 そこで、A氏が医師であるならば、医師免許番号、現在経営あるいは勤務している病院・診療所等の名称・所在地をお教えください。
◇2025年1月14日 事業者から電話で以下の回答がありました。
1 病気等の原因を断定する表示をしていることについて医学的根拠はない。医者(西洋医学)では治らなかった人を対象にしてその成果を記載している。
2 医学では根本的に改善しない疾病や症状を改善することができる旨の貴社が提供する施術の効果を裏付ける根拠については、ホームページにある「お喜びの声」がそれにあたる。
3 A氏が医師であると記載している根拠については、患者として来ていた方がそのような感想を書かれて自らが医者と名乗っていた。
4 問題のある個所は修正していくので指摘してもらいたい。
◇2025年3月28日 事業者からの回答をもとにキャンセルポリシーとホームページ上の広告について問題点を検討
したうえで、事業者に対して「申入書」を送付しました。 主な内容は以下のとおり 。
1 ホームページの表示について:貴社が、不特定かつ多数の一般消費者に対して、「心整体院」のホームページで表示している、①疾病や症状の原因に関する表示、②貴社が提供している施術によって疾病や症状が改善する等の効果に関する表示、③個人の体験談に関する表示、④医師の推薦に関する表示につき、いずれもそれらの表示を停止・削除するよう申し入れます。
2 「キャンセルポリシー」において回数券を購入した顧客に一切返金を認めない取扱いをしている点について
貴社のキャンセルポリシーの「回数券について」に関し、「回数券購入後の返金は、いかなる場合でも一切受け付けておりません。」との記載(以下「本件記載」といいます。)を削除し、消費者が契約期間中であればいつでも本契約を解除できるようにしてください。
◇2025年6月19日 指摘された問題点については重く受け止めて改善の方向で進めていくとの回答書が届きました。
◇2025年8月29日 複数ある店舗のホームページのうち、まずは一部の店舗のホームページが改善されたため、当法人において検討しましたが、「一切返金不可」とされていたキャンセルポリーが改善されたり、ホームページ上の病気の原因や改善に関する記載が削除された点は評価できるものの、いまだ不十分な点があったため、事業者に対して「ご連絡」を送付し、問題点を指摘しました。 主な内容は以下のとおりです。
1 キャンセルポリシーについて
特別な事情により回数券をキャンセルする場合の返金対応については、当法人の2025(令和7)年3月28日付け申入れ書でも指摘させて頂きましたとおり、キャンセルできる場合を「特別な事情」がある場合に限定することは消費者契約法第10条に違反するおそれがありますので、当日にキャンセルする場合を除き、民法の原則に従い、契約期間中であればいつでもキャンセルして返金を求めることができるようにしてください。
また、キャンセルした場合の返金額を計算する際に使用する契約単価については、通常料金の11,000円ではなく、契約時の単価(9,000円)とすることが望ましいですので、ご検討ください。この点については、英会話受講契約において中途解約清算時には契約時の単価で計算すべきとした最高裁平成19年4月3日判決(英会話教室NOVA事件)が参考となります。
2 医師の推薦による表記について
貴社が医師として紹介されていた人物は「A」ではなく「B」(氏名の漢字間違い)であったとのことですが、「B」であれば厚生労働省の医師検索システムで該当する医師がおります。いずれにしろ医師の推薦に関する記載は削除されるとのことですので、了解致しました。
ところで、現在の○○院のホームページを見ますと、「医師も絶賛」「多くのお医者さんからの推薦の声を頂いております。」という表示が残っております。これらの表示は消費者にとっては貴社の整体サービスが著しく優良であると認識させる表示ですので、表示の裏付けとなる合理的な根拠が必要となります。もし合理的な根拠が存在するのであれば当該根拠を当法人に開示してください(景品表示法第35条第1項により適格消費者団体である当法人は事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を開示するよう要請することができ、同条第2項により事業者は正当な理由がある場合を除きこれに応じる努力義務があります。)。もし合理的な根拠が存在しない場合には上記表示についても削除をお願い致します。
◇2025年9月30日 事業者から指摘された問題点については改善したとの回答書が届きました。
◇2025年10月24日 複数の店舗のホームページで「「お喜びの声」と「医師の推薦」の記載が改善されていない
ままとなっていたため、この点の改善を求める「ご連絡(2)」を送付しました。
◇2025年12月2日 改善されていなかった複数の店舗でも表示を改善したとの回答書が届きました。
◇2026年3月3日 当法人が求めた事項については全て改善されたため、「終了のご連絡」を送付しました。
◆なお、本申入れについては終了するものの、事業者のホームページには、2025年2月18日に厚生労働省が発出した「あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針 ~あはき・柔整広告ガイドライン~」に抵触すると疑われる表示があったため、事業者に対し、自社の広告表示が上記ガイドラインに抵触していないか自主的に見直しをするよう求めました。